子どもたちに本物の作品を

子どもたちには、出来る限り本物を提供したい。ほんの少し、短い瞬間でもいいから、本物の芸術文化に触れて欲しい。

劇団KIOによる児童演劇「卵をとるのはだあれ」が神戸市中央区の区民センターで開催された。築40年を超え、レトロな雰囲気を醸し出す同センター大ホールに地域の子どもたち(と、その親たち)が集まった。


オープニングの音楽が鳴り始める。録音された音を流すのではなく、その場で演奏されるマリンバの生音。やがてプロローグが歌声で語られ、これを受けて主人公が、登場する。

途切れることのない進行に、子どもたちの興味は引きつけられ、早い段階で物語に入り込んで行った。

コンテンポラリーダンスが取り入れられるなど、レベルの高いパフォーマンスは大人の目も楽しませてくれる。


子どもたちのために、ことさら赤ちゃん言葉を使ったり、甘えた声でごまかしたりする必要は一切なく、大人が本気で本物を提供すれば、ちゃんと子どもたちは受け取ってくれるんだと、あらためて教えられた気がした。


大人は子どもの先輩であるが故に、ついつい上から目線で、子どもを下に見てしまいがちだが、邪気のないストレートな感性を、むしろリスペクトしなければならないのではないか。


本物に触れると本物をそのまま受け容れる。説明する必要もなく、そこにはただ芸術文化との出会いがあるだけであり、感じ方は多種多様。誘導するものではない。

逆に「本物ではないもの」であっても、彼らはそのまま受け容れてしまう。純粋な感性で、与えられる素材を素直に吸収する。そんな存在だからこそ、出来る限り本物に出会って欲しいと願う。願うばかりでなく、提供し続けて行かなければならないと、大人としての使命を感じる。