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アートと安全について


今年11月に神宮外苑で開催されたTOKYO DESIGN WEEKという現代アート作品の展示会場で、木製のジャングルジムが燃え上がり、中にいた5歳の男の子が亡くなった。作品の素材として使用されていたオガクズが白熱灯の熱によって燃えてしまったのだという。

アート作品の安全性には、兼ねてから疑問を持たない訳ではなかった。

5年前「ビエンナーレ」と銘打ってあちこちで盛んに行われていたアートイベントで、コンテナ型のインスタレーションに入って、木で出来た正方形の枠をいくつかくぐり抜けて奥に進むという鑑賞体験していた。ひとつの木枠をくぐり抜けて腰を伸ばした次の瞬間、頭に激痛が走った。次の木枠で頭を打ったのだ。

避けようとすれば避けられる状況ではあった。でも、狭い空間の中で、斬新なデザインの現代アート作品に純粋に感動し、入り込んでいる状態で、どうしても万全な危機管理体制ではいられなかった。

すぐに作家が駆け寄って、何度も「すみません」と頭を下げていた。彼女も自分の作品で痛みを追う人が出ようとは、さぞかし心苦しかったことだろう。

この作品以外にも、暗闇の中を步く作品があったり、足場の悪い状態で揺れる梯子を上り下りしたりと、いくつかの危険な体験をした。そうするうちに現代アート作品を体験する際には、いくばくかの緊張感が伴うものだと学ばざるを得なくなった。

しかしアートは、本来人の心を浄化したり、癒すためのものであり、いはんや人を傷つける可能性は皆無であるべき。そしてその為に「安全」であることは必須なのではないか。

アート作品の安全基準はどうなっているんだろう。


斬新なデザインや究極の美しさは、安全という基礎の上に立ってはじめて成立する筈だ。子どもたちが安心して触れたり上に乗ったり出来るような、それでいて美しく魅力的な作品が生み出されて行ったら、そこではじめて、アートが人の社会生活と融合できるのではないだろうか。

アート作品が「街の困りモノ」になってしまわないように、作家諸氏はもちろん、我々市民も求め、伝えて行く努力を惜しんではいけないと思う。