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空を見上げて

「今日は、とてもいいことがありました」と、大学を卒業したばかりで採用された男子がわたしに言った。「すごくきれいな夕日を見たんです」と。それが嬉しくて、誰かに伝えたくなったのだとか。以前の職場での話である。

また、別の日には、帰宅して夕食を作っているとメールが来て「空を見て!とてもきれいなお月さまだよ」と知らせてくれた同僚がいた。こちらは二十代の女性。メッセージを読んでからすぐに玄関から出て空をか見上げた。東の空に、ぽっかりと、大きな満月が浮かんでいた。

空を見上げて、しあわせな気分になれるって、そしてそれを他の誰かに伝えたくなるなんて、かなりしあわせな状態だと思う。日々の生活に追い立てられたり、何かの悩みに捉われていたり、時間にに追いかけられているような人は、空を見上げる余裕なんかないだろうから。

ツイッターでは「イマソラ」というハッシュタグで空の写真がアップされている。閲覧するのは小さなスマホの画面でしかないが、画像を見て自分も同じように空を見上げたくなる。実際に見上げてみる。頭の上に展開されているのは、美しい夕日でもなく、大きなお月さまでもない場合が多いけど、青い空だったり、厚い雲だったり、いずれにしても今の自分よりも大きな存在であり、はるか彼方から自分を見下ろし、見守ってくれている。

今、この時間にも、同じ空を見上げている仲間がいるのかも知れない。それぞれに問題や悩みと向き合いながら、自分を律しながら、立て直しながら、ひたむきに生きているんだろうな。人間って、なんていじらしいんだろう。

美しい夕日を見た時に、きれいなお月さま見た時に、その嬉しさを誰かに伝えることが出来る人に、わたしもなりたい。そしてその「誰か」と、しあわせな時間を共有できるように。