尊敬できる人との出会い

清少納言は中宮定子に仕えていたことを誇りに思い、その想いや情景を「枕草子」に綴っている。中宮定子は随分年下だったということだが、清少納言は心より中宮を尊敬し、彼女に仕えることを名誉に感じていたようだ。そんな上司に出会えた清少納言は、本当に幸せだったことだろう。枕草子にはその嬉しさが伺われる部分が随所に見受けられる。
尊敬する上司の下で働くことが出来ると実感し、日々の仕事に生き甲斐などを見出しているサラリーマンが、どれほどいるだろう。
松下電器を築いた松下幸之助とか、阪急電車の創始者小林一三など、かつてはカリスマ的なリーダーがいた。社員やその家族は「この人になら、どこまでもついて行ける」と全面的に信頼し、実際に終身忠誠を誓う人が多かった。彼らの業績や哲学は没後も受け継がれ、時代の流れによって多少は変容を遂げながらも、現在も存在する。
尊敬出来る上司とは、普遍的で揺るがない思想を持っている。より大きな存在からの圧力を覆すだけの理念を持っている。もちろんうわべだけのかっこよさではなく、例えば心を輪切りにしても、中には外側と同じ考えが、高い密度で詰まっているのではないかな。きっと、どこを切り取っても切り口は変わらないのだ。
尊敬できる上司とは、やはり「こんな人になりたいな」と思わせてくれる人。自分の目標になり得る人なんだと思う。欠点も含めて、その人の存在を受け入れ、意図を汲み、実現に向けて邁進できるような、そんな人に出会えたら、人生はそれだけで成功と言えるだろう。
だって、それは、自分の目標を見つけることとほぼ同じことなんだから。