書生節

先日「書生節」を聴いた。


書生とは、紺の着物にヨレヨレの袴、裸足に下駄履き、破れた角帽を斜めに被り、黄ばんだ兵隊シャツが袖やら襟から見え隠れする。。。といういでたちの、明治大正頃の学生を指す。

文明開化で西洋の文化が入ってくるようになり、そのひとつに自分の意見を筋道立てて堂々と人前で話すという「演説」も入ってきた。しかし庶民には難しかったため登場したのが演説の歌謡曲化したものだったが、当初はあくまで政治活動の一環であり、商売ではなかった。

大いに流行ったが、自由民権運動が下火になると姿を変えて行き、道端でバイオリンを弾きながら歌う「書生節」が誕生したという。

昨今は街中どこを探しても見あたらないこの「書生」さんが、地域の区民センターの新春演芸大会に出演したのだ。

演者は旭堂南海さんと宮村群時さん。二人ともバイオリンを手に、古い歌を歌い、次にはそれを替え歌にして歌い、客席に笑いを起こした。


日清・日露戦争の頃には大流行したということだが、現代にも存在していたことに驚いた。

そしてそれを身近な地域の区民センターで鑑賞し、その場にいた他のお客さんたちと感動を共有出来たことも嬉しかった。演者との直接のやり取りもまた、テレビ画面では味わえない。会場に足を運んだからこそ体験出来た貴重な時間となった。

また観たいな。

これを機会に、書生節に興味を持つ人が増え、露出がもっと増え、この空前のともしびのような文化が、再び広く普及したらいいのにな、と思う。そのために、まだ知らない人に伝えて行くことも、我々の使命なのかも知れない。

我々の使命は、意外に多い。