同質の原理

同質の原理とは、心理学者のアルトシューラーが提唱し、音楽療法などで使用される言葉であるが、例えばクライアントが沈んだ気分である時には、無理やり明るい音楽を聴かせるのではなく、クライアントのムードと同じ沈んだ穏やかな音楽が効果的だという考え方だ。
例えばひどく落ち込んでいる時に、元気で明るい音楽を聴くと、自分の気分とのギャップを感じてさらに落ち込んでしまうことがある。そしてたしかに、落ち込んでいる時は、静かで暗い音楽を聴くと、どっぷりと暗い気分に浸ることによって洗い流され、気持ちを切り替えることが出来る。
もう何年も前、ひどく落ち込んでしまった時に、ショパンのピアノ協奏曲第1番を繰り返し聴いていた。物哀しく物憂い曲調は、何かの終りを示唆するかのようで、限りなく切なかった。でも、そればかり聴いているうちに、何となく気分が軽くなり、やがて聴きたい欲求が薄れてきて、聴かなくても大丈夫になり、いつの間にか気分が晴れていた。
同質の原理。案外効果が望めそうだ。音楽療法に限らず、例えば友達が落ち込んでいる時は、不自然にはしゃいだりしないで、共に穏やかに過ごすのがよいのかも知れない。無理矢理前向きな話ばかりしないで、相手の想いをそのまま聴いているだけで、そのうちにお互いの気分が晴れてくるのかも知れない。
いつも自然体で生きていたいわたしには、とても楽な浄化方法だと、ありがたく活用させていただくことにしよう。